はじめての生成AI
なぜ今、生成AIが注目されているのか?
AIという言葉自体は何十年も前からありました。顔認証も、迷惑メールの振り分けも、売上予測もAIです。それなのに、なぜ2022年末を境に世界中が急に騒ぎ出したのでしょうか。理由は三つあります。
命令のしかたが、プログラムから話し言葉に変わった
いちばん大きいのはこれです。それまでAIやプログラムを動かすには、Pythonのようなプログラミング言語や、専用ツールの操作を覚える必要がありました。
Python
# 従来のやり方 — 書ける人しか動かせない
def generate_greeting(name):
return f"こんにちは、{name}さん。本日の案件について..."
print(generate_greeting("田中"))プレーンテキスト
生成AIへの指示 — 日常の言葉でよい
田中さんに送る、新しい案件の打ち合わせ依頼メールを丁寧に作成して。この差が、AIの利用者をエンジニアから全職種へ一気に広げました。事務、営業、クリエイター、学生。誰でも、スマートフォンとブラウザさえあれば、無料か月数千円で使えます。専用の高性能マシンは要りません。これをAIの民主化と呼びます。研究者とエンジニアだけのものだった知能が、言葉を扱える全員の手に渡った、ということです。
文脈を読む技術が、2017年に出そろった
技術側の転機は、2017年にGoogleの研究者らが発表したTransformerという仕組みです。これによってAIは、文章の中の単語同士の関係を深く捉えられるようになりました。以前のAIは長い文章の前半を忘れてしまいましたが、いまは全体の脈絡を保ったまま書けます。
そこに、インターネット上に積み上がった膨大なテキストと、それを高速に処理するGPUの進化が重なりました。仕組み、データ、計算力の三つが同時にそろったのが、ちょうどこの時期だったということです。
ゼロから作れることが、効率化とは別の意味を持った
三つ目は、できることの中身が変わったという点です。従来のAIが得意だったのは、写真を見て猫だと判定する、明日の天気を予測するといった「分類」でした。判定機です。
いまの生成AIは、そこになかったものを作り出します。生産機です。数万字の議事録を数秒で要約する、指示を伝えるだけでコードを書く、企画案を十個並べる、文脈を汲んだ翻訳をする。人間の仕事のうち「作る」工程そのものを肩代わりできる点が、前の世代と決定的に違います。
だから企業も自治体も導入を急いでいます。コスト削減というより、使える組織と使えない組織の間で生産性の差が開いてしまうからです。
評価される能力が入れ替わりつつある
これらが数秒で終わるということは、「知識を多く持っている」「資料を速く作れる」という従来の強みが、そのままでは評価されにくくなるということでもあります。
代わりに効いてくるのは、AIに適切な指示を出す力と、出てきた答えの正誤を判断する力です。下書きはAI、仕上げは自分。この役割分担を前提に仕事を組み直せるかどうかが、これからの差になります。
インターネットやスマートフォンがそうだったように、これは元に戻らない変化です。遠ざけるより、自分の可能性を広げる道具として受け取ったほうが得です。
復習ミニクイズ
生成AIがこれまでのAIと比べて、特に「AIの民主化(誰でも使えるようになること)」をもたらしたと言われる一番の理由は何ですか?