はじめての生成AI
生成AIと「情報漏洩」:入力してはいけない情報とは
貼り付けた一文は、もう手元にない
顧客から届いたメールをそのまま貼って「返信文を作って」と頼む。手早くて、つい毎日やってしまう使い方です。ただしその瞬間、メールの中身はあなたのパソコンではなく、AI を提供している会社のサーバーに渡っています。
多くのサービスでは、入力した内容が対話履歴として保存され、設定によってはモデルの改善にも使われると案内されています。扱いはサービスや契約の形によって違い、規約の改定で変わることもあります。
心配なのは学習に使われることだけではありません。共有リンクを作って渡した相手が別の人に転送する、アカウントを乗っ取られて履歴を丸ごと読まれる、といった経路もあります。生成 AI を「自分だけの閉じたノート」ではなく「外部に預けた書類」と考えるのが安全です。
貼ってよいかどうかを、その場で決める
迷ったときは、自分に一文投げてみてください。この文章が社外の掲示板に貼られたら困るか。 困るなら貼らない。それだけで、ほとんどの場面は仕分けできます。
「困る側」に入りやすいのは、次のようなものです。
| 種類 | 例 |
|---|---|
| 個人情報 | 氏名、住所、電話番号、マイナンバー、病歴 |
| 社外秘 | 未発表の企画、独自のソースコード、財務の数字 |
| 預かりもの | 顧客リスト、取引先から受け取った非公開資料 |
なお、会社によっては就業規則や情報管理規程で、これよりずっと厳しい線が引かれていることがあります。判断の正解は組織ごとに違うので、勤務先の規則を先に確認してください。
固有名詞を消しても、依頼は通る
機密だから使えない、で終わらせる必要はありません。AI が必要としているのは状況の構造であって、本物の固有名詞ではないからです。
避けたいのは、実物をそのまま渡す書き方です。
プレーンテキスト
株式会社テックリードの佐藤太郎部長から届いた、新製品
「AI-Master 2024」への苦情メールへの返信を作ってください。
(メール本文をそのまま貼り付け)同じ依頼は、こう置き換えられます。
プレーンテキスト
法人顧客の責任者から、システムの動作が遅いという苦情が届きました。
自社サポートの担当者として、謝罪と今後の対応を伝えるメールの草案を
作ってください。原因を調べたうえで 3 日以内に再報告する予定です。固有名詞は役割に、具体的な金額は比率や範囲に置き換える。それだけで、出てくる文章の質はほとんど落ちません。会議の議事録を要約させたいときも同じで、参加者を A さん B さんに、社内のコードネームを「次期プロジェクト」に直してから渡せば、要約の役には十分立ちます。
学習に使わせない設定を確認する
多くのサービスには、入力内容をモデルの改善に使わせないための設定が用意されています。ChatGPT なら設定画面のデータ管理まわりに該当する項目があります。法人向けプランや API 経由の利用では、標準で学習の対象外になっていると説明されている場合もあります。
ただし項目名も初期値も更新のたびに変わります。ここに書いた名前を覚えるのではなく、使う前に設定画面と利用規約を自分で見に行く習慣のほうが長持ちします。設定を切ったからといって、社外秘をそのまま貼ってよいことにはならない点も忘れずに。
復習ミニクイズ
社内の新プロジェクトに関する議事録を生成AIに要約させたい場合、情報漏洩を防ぐための「最も適切な対応」はどれでしょうか?