9.9割の人にエンジニア独学は無理
エンジニアの仕事は総合格闘技です。1つの言語を学んだだけでは何も動かず、独学で折れるのはたいてい分野の境目。全体の地図とつなぎ方を、受託開発の代表が書きます。
執筆
ゆめさくコードの編集部です。プログラミング学習に役立つ情報をお届けします。
先に、題の数字について断っておきます。
9.9割というのは、測って出した数字ではありません。 統計を取ったわけでも、どこかの調査を引いたわけでもない。受託開発の会社で人を採り、仕事を発注し、カウンセリングで独学の経験を聞いてきた側の体感です。
そのうえで、なぜそう思うのかを一言で言うと、エンジニアの仕事は総合格闘技だからです。
1つの技だけでは、試合にならない
総合格闘技では、打撃だけが強くても勝てません。組まれたら倒され、寝技に持ち込まれたら何もできない。立ち技、組み技、寝技を全部そこそこ知っていて、ようやく試合が成り立ちます。
エンジニアの仕事も同じ形をしています。たとえば、小さな予約サービスを1つ作るだけで、次の分野を全部通ります。
- 画面をつくる (HTML、CSS、JavaScript)
- 予約を受け付ける処理を書く (サーバー側のプログラム)
- 予約を保存して取り出す (データベースと SQL)
- 世界に公開する (サーバー、ドメイン、HTTPS)
- 変更を記録して、人と合わせる (Git と GitHub)
- 他人の予約を見られないようにする (ログイン、権限、セキュリティ)
- 依頼主が本当は何を欲しいのかを聞いて、文章で確かめる
どれか1つだけでは、何も動きません。Python の本を1冊やり切っても、予約は1件も取れないのです。
職種ごとに担当は分かれます。それでも、自分の担当の外で何が起きているかを知らない人に、うちは仕事を任せられません。職種の分かれ方はエンジニア職種の解説に書きました。
独学の教材は、1種目ずつの道場です
いまの教材はよくできています。無料でも、驚くほど質の高いものがあります。
ただ、ほとんどが1種目ずつに分かれています。Python 入門、SQL 入門、Git 入門。それぞれの道場で、それぞれの技をきちんと教えてくれます。
教えてくれないのは、技と技のつなぎ方です。画面で押したボタンが、どうサーバーに届き、どうデータベースに入り、どう画面に戻ってくるのか。総合格闘技でいえば、打撃から組みに移る瞬間、組みから寝技に移る瞬間です。試合の勝ち負けは、だいたいこの「移る瞬間」で決まります。
詰まるのは、分野の境目です
独学で手が止まる場面を思い出してみてください。手元では動いたのに、公開したら動かない。画面から送ったはずのデータが保存されていない。ログインしたのに、次のページで切れている。
こういうエラーは、どれか1つの分野の中では起きていません。分野と分野の境目で起きています。 だから検索しても、出てくるのは1種目ずつの記事で、自分の状況にぴったり合う答えが見つからない。どの分野の話なのかが分からないので、調べる言葉すら決められません。
夜に3時間詰まって、次の日もその詰まりが入口に置かれたまま。これを何回か繰り返すと、本人の中で「自分には向いていなかった」に変換されます。
でも原因は才能ではありません。全体の地図を持っていないことです。
地図がないと、何を知らないかが分からない
総合格闘技を始めたばかりの人は、自分がどこで負けるかを知りません。寝技を知らなければ、寝かされたときに何をされているのかも分からない。
独学も同じで、知らない分野は、知らないことにすら気づけません。 HTTPS を知らなければ、公開した画面に警告が出る理由に思い至らない。データベースを知らなければ、画面を閉じたら予約が消える理由が分からない。
うちで未経験の人と仕事をするとき、最初に見るのも1つの技の深さではありません。いま触っている作業が、全体のどこに当たるかを言えるかどうかです。
AI が技を出してくれても、試合を組み立てるのは人です
いまは AI に頼めば、画面のコードもサーバーのコードも、それらしいものを出してくれます。1つずつの技は、かなりの部分を AI がやってくれるようになりました。
だからこそ、分野をまたいで全体を組み立てる力の重みが増えています。AI が出したコードが、どの分野のどこに置くものなのか。つないだときに何が起きるのか。そこを判断できないと、AI が出した技を試合で使えません。
受託の現場で AI が書いたコードを見ていても、困るのはたいていつなぎ目です。この話はAI時代にエンジニアを目指す意味はあるかで詳しく書いています。
残りの0.1割は、どういう人か
独学のまま現場に行った人もいます。共通しているのは、試合ができる場所を持っていたことでした。
職場で実際のサービスに触れていた。エンジニアの友人に、作ったものを見てもらえた。勉強会で、全体の話をしてくれる人がいた。どれも、1種目ずつではなく、つないだ状態で練習できる場所です。
もうひとつ、作りたいものが具体的にある人も強い。作りたいものがあると、必要な分野を自分で全部通ることになるからです。目的が、そのまま総合の練習メニューになります。
この2つを持っているなら、独学を勧めます。お金を払う必要はありません。教材は無料で良いものがたくさんあり、うちの学習ポータルにも無料で開いている範囲があります。
うちがやっているのは、試合ができる場所をつくることです
スクールの仕事は、技を1つずつ教えることではないと思っています。技は無料の教材でも、AI でも学べます。
うちが用意したいのは、全体の地図と、つないで動かす練習と、境目で詰まったときにすぐ聞ける相手です。境目の詰まりは、どの分野の話なのかを切り分けるところから一緒にやらないと解けません。だから質問の回数に上限を置いていません。
1つの技を磨くのは、そのあとでいい。まず試合の全体を知ってください。
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※筆者は「ゆめさくエンジニア」の運営代表です。題の9.9割は測った数字ではなく、受託開発と採用の現場で見てきた体感です。
更新履歴 2026-10-01 総合格闘技の見立てで全面改稿