ソーシャルエンジニアリングの手口と対策 情報セキュリティマネジメント試験の対策と IPA の過去問

情報セキュリティマネジメント試験15分で解いて確かめられます

ソーシャルエンジニアリングは、機械ではなく人のすきを突いて、パスワードや情報やお金を引き出す手口です。なりすまし、ショルダーハッキング、トラッシング、共連れ、ビジネスメール詐欺の見分け方と効く守りを、IPA の過去問 4 問と 8 つの場面の練習で確かめます。

文 ゆめさくコード編集部公開 2026年10月29日更新 2026年10月29日

ソーシャルエンジニアリングは、機械の弱さではなく人の心のすきを突いて、パスワードや機密の情報、お金を引き出す手口の総称です。電話で担当者を名乗って聞き出す、肩越しに画面を盗み見る、捨てたごみをあさる、取引先になりすましたメールで振り込ませる、などがあります。ソフトを直しても防げないので、守りは決まりと確かめ方と教育が中心になります。

この頁で押さえる 3 つ
  • 手口の名前は、何を使って (電話、のぞき見、ごみ、扉、メール、画面) 何を引き出すかで見分ける
  • だます側は、急がせる、偉い人や担当を名乗る、親切心に頼る、の 3 つで考える時間を奪う
  • 守りの柱は「別の経路で確かめる」。電話は登録済みの番号へかけ直し、振込先の変更は前から知っている連絡先で確かめる

主な手口と、効く守り

情報セキュリティマネジメント試験と仕事でよく出る手口を、何をするかと効く守りで並べました。

なりすまし

社員、システム管理者、取引先、役員などを名乗り、電話や対面でパスワードや情報を聞き出す。

  • 効く守り。パスワードは誰にも口で伝えない決まりにする。こちらから登録済みの番号にかけ直して本人を確かめる

ショルダーハッキング

肩越しに画面やキーボードの手元を盗み見る。

  • 効く守り。人前で機密を開かない。のぞき見を防ぐフィルターを貼る。離席するときは画面を鍵で閉じる

トラッシング

捨てた書類や記録媒体から情報を探す。

  • 効く守り。シュレッダーにかける、溶かして処分する、媒体は壊してから捨てる

共連れ (ピギーバック)

入る許しのある人の後ろについて、扉を一緒に通る。

  • 効く守り。1 人ずつ社員証をかざす決まりにする。知らない人は受付へ案内する

フィッシング

本物に似せたメールや SMS で偽のサイトへ誘い、ID やパスワードを入れさせる。

  • 効く守り。届いたリンクから入らない。公式のアプリやブックマークから開く。多要素認証を入れる

ビジネスメール詐欺 (BEC)

取引先や自社の役員になりすましたメールで、攻撃者の口座に振り込ませる。

  • 効く守り。振込先の変更や急ぎの送金は、別の経路で確かめる。1 人で決めない

SNS からの下調べ

社員が SNS に出した所属、役職、職場の写真から、名乗る相手の名前や社内の言い方を調べ、なりすましの電話やメールを本物らしく見せる。

  • 効く守り。投稿に所属、役職、社員証や画面が写った写真を出しすぎない

偽のセキュリティ警告

「ウイルスに感染した」という偽の画面で電話させ、遠隔操作のソフトを入れさせたり、お金を払わせたりする。

  • 効く守り。表示された番号に電話しない。画面を閉じる

JNSA (日本ネットワークセキュリティ協会) は、2013 年時点の資料で、電話でのなりすましの例として、社員を装ってシステム管理者に「パスワードを忘れたので教えて欲しい」と頼む手口や、面識のない役員を名乗って高圧的に迫る手口を挙げ、折り返しの連絡で本人を確かめてから答えるよう勧めています (ソーシャルエンジニアリングの手口と対策)。

なぜ人はだまされるのか

ソーシャルエンジニアリングの文面や電話には、決まった型があります。型を知っておくと、その場で気づけます。

  • 急がせる。「今日中に」「今すぐ」「止まります」と言って、確かめる時間を奪う
  • 偉い人や担当を名乗る。システム管理者、監査部、社長、取引先と名乗るだけで、疑いにくくなる
  • 親切心に頼る。「荷物で手がふさがっている」「困っている」と言われると、断りにくい
  • こわがらせる。「ウイルスに感染した」「アカウントが止まる」と言って、落ち着いて考えさせない

どれも、相手の言う連絡先や手順に乗せたまま進めさせるのが狙いです。だから守りは、相手の言う道を降りて、自分の知っている道で確かめることになります。

過去問で確かめる

情報セキュリティマネジメント試験の 3 問と、ITパスポート試験の 1 問です。問題文と選択肢は IPA の問題冊子のとおりで、手を入れていません。正解は同じ回の解答例で確かめました。解説はゆめさくが書いたものです。選んでから「答え合わせ」を押すと、正誤と解説が出ます。

過去問 1 緊急を装って聞き出す行為の分類

緊急事態を装って組織内部の人間からパスワードや機密情報を入手する不正な行為は,どれに分類されるか。

選んでから押してください

出典:平成28年度 秋期 情報セキュリティマネジメント試験 午前 問25(問題冊子の PDF)

過去問 2 ソーシャルエンジニアリングに当たる行為

ソーシャルエンジニアリングに該当するものはどれか。

選んでから押してください

出典:平成29年度 春期 情報セキュリティマネジメント試験 午前 問21(問題冊子の PDF)

過去問 3 ビジネスメール詐欺 (BEC)

BEC(Business E-mail Compromise)に該当するものはどれか。

選んでから押してください

出典:令和元年度 秋期 情報セキュリティマネジメント試験 午前 問1(問題冊子の PDF)

過去問 4 パッチでは防げない脅威

情報セキュリティにおける脅威のうち,脆弱性を是正するセキュリティパッチをソフトウェアに適用することが最も有効な対策になるものはどれか。

選んでから押してください

出典:令和7年度 ITパスポート試験 公開問題 問70(問題冊子の PDF)

場面で見分ける

試験では、場面の文から手口の名前を選ばせる問題がよく出ます。次の 8 つの場面を読んで、当てはまる名前を押してください。押すとすぐに正誤と、その場面での守り方が出ます。場面はゆめさくが作った例で、実際の事件ではありません。

0 / 8 場面に答えました。正解 0

  1. 場面 1

    夕方、情報システム部を名乗る人から内線ではない電話が来た。「今日中にメールの移行を終えないと、あなたのアカウントが止まります。確かめるので、今のパスワードを教えてください」

  2. 場面 2

    新幹線で仕事の資料をノート PC で開いていたら、隣の席の人が画面とキーボードの手元をちらちら見ている。

  3. 場面 3

    回収日の前の夜、事務所の前に出した紙ごみの袋を、見知らぬ人が持ち去っていった。袋には打ち合わせのメモや印刷した名簿が入っていた。

  4. 場面 4

    社員証をかざして開く扉の前で、両手に段ボールを抱えた人が「すみません、一緒に入らせてください」と言い、あとに続いて入ってきた。

  5. 場面 5

    宅配業者を名乗る SMS が届いた。「お荷物をお届けしましたが不在のため持ち帰りました。再配達はこちら」。開くと、ID とパスワードを入れる画面が出た。

  6. 場面 6

    いつもの取引先の担当者の名前で、経理あてにメールが来た。「当社の口座が変わりました。今月分から新しい口座にお振り込みください」。署名も文面もいつもどおりに見える。

  7. 場面 7

    ニュースのサイトを見ていたら、急に画面いっぱいに「ウイルスに感染しました。今すぐサポートに電話してください」という警告と電話番号が出て、警告の音が鳴りだした。

  8. 場面 8

    受付に「本社の監査部の者です」と名乗る人が来た。名刺を出して、「急ぎなので、このまま執務室に通してください」と言う。

人の心理と組織の決まりを読み解いて守る仕事が自分に合うかは、転職診断で確かめられます。

自分でできる 3 つ

  • 届いたメールや SMS のリンクと添付を、そのまま開かない。公式のアプリやブックマークから確かめる
  • パスワードを使い回さない。聞き出されたり漏れたりしても、ほかのサービスまで入られない
  • 人前で画面や書類を広げない。離れるときは画面を鍵で閉じる

組織で決めておくこと

ソーシャルエンジニアリングは、その場の 1 人の判断を狙います。だから組織では、迷わずに断れる決まりを先に作り、全員に知らせておきます。

  • パスワードは誰にも伝えない。情報システム部が電話やメールでパスワードを聞くことは無い、と全員に知らせておく。聞かれたら、それだけで怪しいと分かる
  • 本人の確かめ方を決める。電話での問い合わせには、登録済みの番号へかけ直してから答える。パスワードの再発行は、決まった手続きでだけ受ける
  • お金の動きは別の経路で確かめる。振込先の変更や急ぎの送金の依頼は、メールに書かれた連絡先ではなく、前から知っている電話番号などで相手に確かめる。IPA は、ビジネスメール詐欺の手口があることをまず職員に知ってもらい、そのうえで多層の守りを重ねるよう案内しています (ビジネスメール詐欺 (BEC) 対策特設ページ)
  • 入退室を管理する。社員証を見えるように付ける、扉は 1 人ずつ通る、入退室の記録を残す
  • 捨て方を決める。紙はシュレッダー、機密の書類は溶かして処分、記録媒体は壊してから捨てる
  • 報告しやすくする。「怪しい電話が来た」をすぐ言える窓口を作る。だまされかけた話が集まると、次の人が気づける
  • 聞き出されても入られない仕組みを重ねる。パスワードを聞き出されても、多要素認証があれば、それだけではログインされにくい

試験での問われ方

試験は、場面の文から手口の名前を選ぶ形と、名前から当てはまる場面を選ぶ形で出ます。見分けのこつは次の 3 つです。

  • 人をだましているか。ソフトやプログラムで盗む (キーロガー、辞書攻撃、パスワードリスト攻撃) なら、ソーシャルエンジニアリングではない。過去問 2 のイからエがこれ
  • 何を使うか。電話や対面ならなりすまし、のぞき見ならショルダーハッキング、ごみならトラッシング、扉なら共連れ、偽のサイトならフィッシング
  • 狙いは何か。取引先や役員を装ってお金を振り込ませるならビジネスメール詐欺。過去問 3 のように、メールの悪用でも狙いが妨害や信用を落とすことなら、別の手口になる

対策を選ぶ問題では、過去問 4 のとおり、ソフトの修正 (パッチ) では防げないことを覚えておきます。効くのは、決まり、教育、確かめる手順です。

受かったあとの道

試験に受かったあと、ここで覚えたことを仕事の手に移していくための頁です。気になったものから開いてください。

資格を仕事につなげるなら、転職ロードマップで目指す仕事と順番を確かめられます。セキュリティの仕事が自分に合うかは、転職診断で確かめられます。