問14 バックアップと復旧の時間

情報セキュリティ​マネジメント試験 令和8年度 公開問題、全15問のうちの問14。

出典:令和8年度 情報セキュリティマネジメント試験 科目A・B 公開問題 問14(図 1 は枠を外して 1 行ずつの文にした。表 1 は原本の画像を文字に書き起こし、狭い画面で読めるよう項番を管理策の欄に入れて 2 列にした。空欄を[ a1 ]~[ a3 ]の形で示し、解答群の表を文に組み直した)

A 社は従業員 2⁠0⁠0 名の電子機器メーカーである。東京に本社があり,新潟に工場がある。

A 社では,ファイルサーバを図 1 のように運用している。

図 1 A 社のファイルサーバの運用

・ファイルサーバは本社と工場のサーバルームに設置している。

・ファイルサーバは,磁気テープを使用してファイルのバックアップを取得している。

・土曜日の午前 2 時からフルバックアップを取得し,翌週の火曜日と木曜日の午前 2 時から増分バックアップを取得している。

・情報システム部の担当者は毎週月曜日,火曜日,木曜日の朝 1⁠0 時頃,バックアップジョブの実行結果の確認と磁気テープの交換を行い,磁気テープは耐火金庫に保管している。

・磁気テープには上書きモードでバックアップを取得し,1 か月分の磁気テープを世代管理している。

・これまで,フルバックアップからのリストアには平均して 4 時間,1 回の増分バックアップからは平均して 0.2⁠5 時間掛かっている。

・A 社は ICT 継続のための試験を実施しており,ファイルサーバも試験対象である。

注記 事業影響度分析の結果に基づき,ファイルサーバは,7⁠2 時間の目標復旧時点(RPO)と 1⁠2⁠0 時間の目標復旧時間(RTO)が要求事項として定められている。

A 社は ISMS 認証を取得しており,最高情報セキュリティ責任者(CISO)を中心に情報セキュリティに取り組み,定期的に,情報セキュリティリスクアセスメントを行っている。今般,ISMS 認証基準が JIS Q 2⁠7⁠0⁠0⁠1:2⁠0⁠2⁠3 に改正されたことを受け,情報セキュリティリーダーの B さんは,新基準への移行審査に向けて準備することになった。改正によって新たに追加された情報セキュリティ管理策について,B さんは情報システム部の担当者に取組状況を確認し,その評価結果を表 1 にまとめた。

表 1 B さんの評価結果(抜粋)
項番と情報セキュリティ管理策評価結果
1 (事業継続のための ICT の備え)事業継続の目的及び ICT 継続の要求事項に基づいて,ICT の備えを計画し,実施し,維持し,試験しなければならない。実施している

B さんは,移行審査前の内部監査で,内部監査室から表 1 の項番 1 に関するファイルサーバの運用について何点か質問を受け,表 2 のとおり回答した。

表 2 内部監査室への B さんの回答(抜粋)
項番B さんの回答
1例えば,金曜日の正午に障害が発生した場合,少なくとも[ a1 ]の時点のデータは復元しなければならない。
2例えば,木曜日の正午に障害が発生し,ファイルサーバの全データが消失したとすると,バックアップからのリストアには[ a2 ]時間掛かると予想される。
3ICT 継続の計画書は,[ a3 ]が承認している。

設問 表 2 中の[ a1 ]~[ a3 ]に入れる字句の適切な組合せを,a に関する解答群の中から選べ。

  1. アa1 月曜日の正午,a2 4.2⁠5,a3 CISO
  2. イa1 月曜日の正午,a2 4.2⁠5,a3 情報システム部の担当者
  3. ウa1 月曜日の正午,a2 4.2⁠5,a3 内部監査室長
  4. エa1 月曜日の正午,a2 4.5⁠0,a3 CISO
  5. オa1 月曜日の正午,a2 4.5⁠0,a3 情報システム部の担当者
  6. カa1 火曜日の正午,a2 4.2⁠5,a3 情報システム部の担当者
  7. キa1 火曜日の正午,a2 4.2⁠5,a3 内部監査室長
  8. クa1 火曜日の正午,a2 4.5⁠0,a3 CISO
  9. ケa1 火曜日の正午,a2 4.5⁠0,a3 情報システム部の担当者
  10. コa1 火曜日の正午,a2 4.5⁠0,a3 内部監査室長
答えと解説を開く

正解はクです。

a1 は目標復旧時点 (RPO) の計算です。RPO 7⁠2 時間は「障害の時点から 7⁠2 時間前までのデータは取り戻す」という目標です。金曜日の正午から 7⁠2 時間 (3 日) さかのぼると、火曜日の正午です。a2 はリストアの時間です。木曜日の正午の時点で取れているのは、土曜日のフルバックアップと、火曜日と木曜日の午前 2 時の増分バックアップ 2 回です。全データを戻すには、フルの 4 時間に増分 2 回分の 0.2⁠5 × 2 = 0.5 時間を足して 4.5⁠0 時間掛かります。a3 の ICT 継続の計画書は、組織として正式に決める物です。この選択肢の中では、情報セキュリティの取組みの中心にいる CISO が承認するのが適切です。作る側の担当者や、独立した立場で確かめる内部監査室は、承認する立場に向きません。火曜日の正午、4.5⁠0、CISO の組で、正解はクです。

ほかの選択肢が違う理由

  • アa1 の月曜日の正午は、金曜日の正午から 9⁠6 時間前で、RPO の 7⁠2 時間より古すぎます。a2 も増分を 1 回分しか数えていません。
  • イa1 と a2 が誤りです。さらに a3 の情報システム部の担当者は計画を作り運用する側で、自分で承認するのは適切ではありません。
  • ウa1 と a2 が誤りです。a3 の内部監査室は、計画や運用を独立した立場で確かめる役なので、承認する側には立ちません。
  • エa2 と a3 は合っていますが、a1 の月曜日の正午は 9⁠6 時間前で、RPO の 7⁠2 時間を満たしません。
  • オa1 の月曜日の正午が誤りで、a3 の担当者による承認も適切ではありません。
  • カa1 は合っていますが、a2 は火曜日と木曜日の増分の 2 回分 (0.5 時間) を足す必要があり、4.2⁠5 時間ではありません。a3 も担当者では不適切です。
  • キa1 は合っていますが、a2 は増分 2 回で 4.5⁠0 時間です。a3 の内部監査室は承認する立場ではありません。
  • ケa1 と a2 は合っていますが、a3 の情報システム部の担当者は、計画を作る側で、自分で承認する立場には向きません。選択肢の中で承認にふさわしいのは CISO です。
  • コa1 と a2 は合っていますが、a3 の内部監査室長が承認すると、監査する側がその計画を自分で確かめることになり、独立性が保てません。

仕組み

RPO (目標復旧時点) は「どの時点のデータまで戻すか」、RTO (目標復旧時間) は「止まってから何時間で戻すか」です。RPO はさかのぼる時間、RTO は先へ進む時間、と向きで覚えると混ざりません。

増分バックアップは、前回のバックアップから変わった分だけを取る方式です。取るのは速い代わりに、戻すときはフルに増分を古い順に全部重ねる必要があります。そのため、増分の回数が増えるほどリストアは長くなります。