基本情報技術者(FE)対策

リスク管理の事例

対策は「効くかどうか」の前に「見合うかどうか」

前回までは、原因を当てる問題と順番を問う問題を見ました。この回で扱うのは、提示された対策が妥当かどうかを評価する型です。技術的に効く対策でも、守る資産より対策の費用のほうが高ければ採用されません。事例文にわざわざ金額や作業時間が書かれていたら、それは比較して答えを出せという合図です。

リスクの大きさは2つの掛け算で決まります

リスクの大きさは、起きたときの被害額と、起きる可能性の掛け算で見ます。年間にならした被害の見込み額を出せば、対策の年間費用と同じ土俵で比べられます。

例として、ある事故の被害額が1回あたり500万円、起こる頻度が5年に1回だとします。年間の見込み被害は500万円を5で割って100万円です。ここで年間150万円かかる対策を導入すると、費用のほうが上回ります。年間60万円で被害の発生確率を半分にできる対策なら、減らせる被害は年50万円なので、これも見合いません。数字が出てきたら、必ずこの形で計算してください。

リスクへの対応は4つに分かれます

対応内容向いている場面
低減対策を入れて発生確率か被害を小さくする起こりやすく、被害もそれなりに大きい
回避その業務やサービスをやめる被害が甚大で、対策では下げ切れない
移転保険や委託で他者に引き受けてもらうめったに起きないが、起きると大きい
保有何もせず受け入れる被害が小さく、対策の費用のほうが高い

受容という言葉が出てきたら保有のことです。何もしないという選択が正解になる設問は実際にあります。対策を入れる案がいつも正しいと思い込んでいると、この型で落とします。

事例を1つ読んでみます

医療機器の部品を作るみどり精機では、設計データを保管するファイルサーバの故障に備える案を検討しています。サーバが停止すると設計作業が止まり、1日あたり40万円の損失が出ます。過去の実績から、故障による停止は平均して4年に1回、復旧までに5日かかっています。情報システム部は、待機用サーバを常時用意して自動で切り替える構成を提案しました。この構成では停止は半日で収まりますが、機器と保守で年間90万円かかります。別案として、故障時に部品を優先的に手配する保守契約があり、こちらは年間15万円で復旧を2日に短縮できます。

計算します。今のままの年間見込み損失は、40万円かける5日で200万円、これを4年で割って50万円です。待機用サーバなら停止は半日なので20万円、4年で割って5万円となり、年45万円を減らすために年90万円を払うことになります。優先手配の契約なら40万円かける2日で80万円、4年で割って20万円ですから、年30万円を減らすために年15万円です。数字の上で見合うのは後者です。

事例文の中で待機用サーバのほうが技術的に優れているのは確かですが、設問が費用対効果を聞いているなら答えは変わります。何を聞かれているかを先に読む、という第1回の話がここでも効きます。

数字が無いときの判断

金額が示されていない事例もあります。その場合は、対策が業務を止めていないかを見ます。安全のためにインターネット接続を全面的に禁止する、といった案は、事故は防げても業務が回りません。守るための仕組みが業務を壊しているなら、それは妥当な対策ではない、というのが評価の物差しです。

生田 陸人
ゆめさくエンジニア / 現役ソフトウェアエンジニア
編集 LuaGate編集部