エンジニアキャリアの歩き方
年収を上げるための交渉術と市場相場の調べ方
希望年収を聞かれて、答えられない
面談で希望額を聞かれ、口ごもってしまう。あるいは、根拠のないまま数字を言ってしまい、その後の会話がかみ合わなくなる。どちらも、手元に相場の感覚が無い状態で聞かれているのが原因です。
そして相場は、一つの数字として存在していません。同じ経験年数でも、地域、業種、企業の規模、その会社の資金の状況で幅が出ます。だから調べる目的は「正解の額を知ること」ではなく、自分が交渉できる幅がどのあたりに広がっているのかを、輪郭として掴むことになります。
一つの情報源を信じない
情報源にはそれぞれ癖があります。癖を知ったうえで重ねると、輪郭が見えてきます。
| 見る場所 | 分かること | 気をつける点 |
|---|---|---|
| 求人票の給与欄 | その職種に会社が出す幅の上下 | 上限は経験十分な人向けで、そのまま届く額ではない |
| スカウトの提示額 | 今の経歴に外がつけている値 | 面談前の概算で、選考を経ると変わる |
| 給与公開サイト | 実際に働いている人の水準 | 投稿が偏りやすく、件数が少ないと参考にならない |
| 転職支援の担当者 | 直近の決まり方の傾向 | 決まることが利益になる立場である点は踏まえる |
複数を見て、上と下がだいたい揃ってきたら、そこが今の輪郭です。一つだけ突出した数字が出てきたときは、条件のどこかが違うと考えて、前提を確かめたほうが安全です。
上がるのは、根拠が相手の言葉になったとき
伝え方でよく起きるのが、技術の習得を根拠にしてしまうことです。新しい言語を覚えた、難しい実装ができるようになった。本人にとっては大きな前進ですが、予算を動かす側から見ると、それが何に効いたのかが分かりません。
橋を架けるのは、技術と、その先に起きた変化をつなぐ一言です。障害の対応時間が短くなった、リリースにかかる手順が減った、外部サービスの利用料が下がった、問い合わせの件数が減った。売上に直接つながる仕事ばかりではないので、無理に金額に換算する必要はありません。前と後を並べられれば十分です。
日々の仕事のなかで、変えた場所と、変える前の状態をメモに残しておく。この習慣があるかどうかで、話す段になったときの説得力がまったく違ってきます。
交渉には、場とタイミングがある
準備ができていても、話す場が無ければ動きません。現職なら、評価や目標設定の面談が組まれている時期が自然な場になります。期の途中に突然切り出すより、査定の材料が集められる時期に合わせたほうが、相手も動きやすくなります。
転職の場面では、条件の話が出るタイミングをこちらから早めない、という選択肢があります。序盤で希望額を聞かれたら、役割の中身を聞いたうえで相談したいと返して構いません。自分に何が期待されているかが分かってからのほうが、根拠を添えて話せます。
そして、交渉が動くかどうかを大きく左右するのは、他に選択肢を持っているかどうかです。ただし、他社の提示を交渉材料に使うなら、そこへ行く意思が本当にあるときに限ります。使うつもりのない札を切ると、話がまとまった後の関係に響きます。額そのものより、入った後にその額を続けて受け取れる根拠が自分にあるか。そこを見ておくと、交渉の落としどころも自然に決まります。
復習ミニクイズ
現職での昇給交渉において、マネージャーから「正当な評価」と「給与アップの合意」を引き出すために最も適切なアプローチはどれですか?