エンジニアキャリアの歩き方
エンジニアに資格は必要?基本情報・応用情報・AWSの選び方
「資格って取ったほうがいいですか」に、一言で答えられない
この質問には、どちらの答えも見つかります。「実務経験がすべてだから不要」と言う現役エンジニアがいる一方で、求人票の歓迎条件には資格名が並び、社内では取得を勧められる。両方が本当のことを言っているので、どちらを信じるかを決めても意味がありません。
意見が割れるのは、資格に何を期待しているかが人によって違うからです。ここでは取るかどうかを判断する前に、資格で何が身につき、何が身につかず、どういう状況で効くのかを分けて見ていきます。分けてしまえば、自分の場合はどうかを自分で決められます。
身につくのは、知らなかった領域の地図
資格学習の中身は、試験範囲に沿った網羅的なインプットです。ここで得られるものは、はっきりしています。
自分が今まで触れてこなかった領域が、どこにどれだけ広がっているかが分かることです。Web アプリだけを作ってきた人が基本情報技術者試験の範囲に触れると、二進数の扱い、データ構造、ネットワークの階層、データベースの正規化、セキュリティの基本といった話が並んでいて、そのうち自分が説明できるのはごく一部だと気づきます。この「知らないことの位置が分かる」状態は、独学では作りにくいものです。
もう一つは、名前を覚えることです。現場で先輩が使う言葉が何を指しているのかが分かるようになると、会話に入っていけるようになり、検索もできるようになります。地味ですが、入りたての時期にはこれが一番効きます。
身につかないのは、作れるようになること
一方で、資格に期待しても得られないものもあります。動くものを作る力は、試験勉強では伸びません。
クラウド系の資格で、サービス名とその用途を覚え、選択肢から適切な構成を選べるようになったとします。それでも、実際にコンソールを開いて権限を設定し、思ったとおりに通信が通らずに数時間詰まる、という経験は別物です。詰まって調べて直す過程で身につくものは、問題集では代替できません。
同じ理由で、資格の数がそのまま実力を示すことにもなりません。合格証を並べているのに、目の前のエラーの原因を切り分けられない、という状態は起こり得ます。試験勉強と実機の操作を並走させると、この落差はかなり埋まります。学んだサービスを一つ選んで、実際に立ち上げて壊してみる。それだけで、覚えた言葉が手触りのある知識に変わります。
現場の話 — 資格を取った人が伸びるのは、資格そのものより「合格後に、覚えたことを使う場所を作った人」であることが多いです。学んだ範囲で小さなものを一つ作るところまでを、学習計画に入れておくと無駄になりません。
効く状況と、効かない状況
同じ資格でも、置かれた状況によって効き方が変わります。
効きやすいのは、実務経験がまだ薄く、書類の段階で判断材料が少ないときです。未経験からの転職や、社内での異動希望のように、相手があなたの仕事ぶりを見たことがない場面では、資格は「一定量の学習を最後までやり切った」ことの手がかりになります。また、資格手当や報奨金の制度がある会社では、金額と労力を比べて決められるので判断が単純です。
効きにくいのは、すでに任せられている仕事があり、その成果で評価されている場面です。ここで資格を一つ増やしても、評価の材料はほとんど変わりません。同じ時間を使うなら、担当している領域を一段深く掘るか、社外に出せる形の成果物を作るほうが返りが大きいことが多いです。
なお、国家試験の類には有効期限が無く、ベンダーの認定には更新が必要なものが多い、という違いもあります。長く効かせたいのか、今の仕事に直結させたいのかで、選ぶ方向は変わります。制度は変わるので、受けると決めた時点で実施団体の公式情報を確認してください。
「取れば有利」でも「無駄」でもありません。今の自分がどちらの状況にいるかを見て、決めてください。
復習ミニクイズ
エンジニアが長期的な市場価値を高めるために、資格をどのように活用するのが最も戦略的であると述べられていますか?