エンジニアキャリアの歩き方
初級(1〜3年目)エンジニアが陥りやすいキャリアの罠
去年と同じ仕事を、速くこなせるようになっただけ
1 年目は覚えることばかりで、毎週できることが増えます。2 年目に入ると手が速くなり、レビューで指摘される回数も減ります。ここで一度、伸びている実感が薄くなる時期が来ます。
実際に起きているのは、同じ種類のタスクを繰り返す期間が長くなったということです。速くなったのは事実なので、悪いことは何も起きていません。ただ、速さは一定のところで頭打ちになり、その先は自然には伸びません。1 年目と 3 年目の差が「速さ」だけになっていると感じたら、そこが分かれ目です。
| 見えている症状 | その裏で起きていること |
|---|---|
| チケットの内容がほとんど同じ | 判断が必要な部分を、誰かが先に済ませている |
| 仕様の疑問が浮かばなくなった | 仕様を受け取る位置から動いていない |
| 調べる時間が短くなった | 既知の範囲だけで解けるタスクが回ってきている |
渡された仕様の外側を、一度も見ない期間が続く
チケットに書かれたとおりに実装して、レビューを通して、閉じる。この動き方は評価もされるので、続けていても困りません。困るのは、この形のままだと仕様を決める側の経験がまったく積まれないことです。
抜け出す入り口は、実装の前に一度だけ聞くことです。「この画面は誰がどのタイミングで使うものですか」「この項目を必須にすると、既存のデータはどうなりますか」。この種の質問は、仕様の穴を早い段階で見つけるので、聞かれた側にとっても得になります。答えを聞いているうちに、仕様が決まる前の会話に呼ばれる回数が増えていきます。
もう一つ、この時期に多いのが、必要以上に複雑な設計を持ち込んでしまうことです。学んだ設計を試したくなるのは自然ですが、規模に対して仕組みが重いと、後から入る人が読めなくなります。技術的な興味と、保守にかかる時間は別勘定で見ておく必要があります。
社内でしか通じない上手さが増えていく
3 年も同じ環境にいると、社内の事情に最適化された知識が大量にたまります。あの設定はあの人に聞く、あのバッチは月末に触らない。日々の仕事はこれで速く回りますが、この知識は会社の外に持ち出せません。
厄介なのは、外に持ち出せる力と持ち出せない力が、社内では同じ「仕事ができる」に見えることです。両者を分けるには、自分の仕事を会社名や社内システム名を使わずに説明してみるのが早い方法です。説明できる部分が持ち運べる力で、固有名詞を外すと何も残らない部分が、社内限定の上手さです。
手戻りの原因は、だいたい会話の側にある
会議や調整を「コードを書く時間が減るもの」として扱うのも、この時期によくある見立てです。実際には、認識のずれに気づかないまま作り切ってしまったときの作り直しのほうが、はるかに大きな時間を持っていきます。
ここで必要なのは話し上手になることではなく、技術上の制約を相手の言葉に置き換えて伝えることです。「その仕組みだと、対象が増えたときに待ち時間が伸びます。件数の上限を決められるなら今の形でいけます」のように、制約と選択肢をセットで出せると、会話が調整から意思決定に変わります。
そのうえで、やったことを月に一度書き留めておくと、あとで効いてきます。何を直し、何がどう変わったか。数字が取れるものは数字で。この記録があるかどうかで、次の機会に自分の仕事を説明できる解像度がかなり変わります。
復習ミニクイズ
本レッスンの内容に基づき、市場価値を停滞させないために「1〜3年目のエンジニアが最も意識すべき行動」として適切なものはどれですか?