エンジニアキャリアの歩き方
【中級者向け】マネジメントとスペシャリスト、どちらを選ぶか
「そろそろどっちか決めて」と言われて固まる
三年から七年目あたりで、上司との面談でこう聞かれることがあります。「マネジメントに進みたいか、技術を深めたいか」。片方を選んだら、もう片方の扉が閉まる気がして、返事に詰まる。多くの人が、この場面で答えを先送りします。
先に伝えておきたいのは、この二つは行き来している人のほうが珍しくないということです。チームを持ってみて自分には合わないと分かり、二年で現場に戻る人がいます。逆に、しばらく開発に集中してから、また人を見る側に戻る人もいます。管理職を経験したエンジニアは、見積もりや優先度の決まり方を知っているぶん、設計の判断が現実的になるので、戻ったあとの評価はむしろ上がることが多いです。
一度の選択で人生が決まるわけではない、という前提に立つと、この質問はずいぶん軽くなります。
違うのは偉さではなく、成果の数え方
二つの役割は、上下ではありません。数えているものが違います。
チームを見る側の成果は、自分の書いた量ではなく、チーム全体が出し続けたものの総量です。だから、自分がコードを書かずに一日が終わっても、詰まっていたメンバーが動き出したなら、その日は仕事をしたことになります。逆に、自分だけが猛烈に実装して、他の四人が待たされていたなら、成果は下がっています。
技術で貢献し続ける側の成果は、誰も解けなかった課題が解けたかどうかです。海外では個人として貢献する役割という意味の呼び方をされ、管理職と同等の等級と処遇を用意している会社もあります。ただし、この段に上がるほど実装時間が増えるとは限りません。技術選定、設計レビュー、性能問題の調査といった、書く以外の時間が増えていきます。
「人が好きかコードが好きか」ではなく「どちらの成果の数え方で評価されたいか」で見ると、自分の向きが分かりやすくなります。
ただし、二本の道が同じ高さまで用意されているかどうかは会社によって違います。技術で貢献し続ける等級が管理職と同水準まで伸びている会社もあれば、一定より上は管理職の肩書きが前提になっている会社もあります。今の職場がどちらなのかは、等級表を見せてもらうか、上の役職についている人の顔ぶれを見れば見当がつきます。制度の形が自分の希望と合わないなら、それ自体が判断材料になります。
決める前に、一週間だけ試してみる
適性は考えても出てきません。小さく試すほうが早いです。
チームを見る側を試したいなら、次のスプリントで進行役を引き受けてみてください。誰が何で詰まっているかを把握し、話が発散したら戻し、決まらない議論に決着をつける。一週間やってみて、疲れはするが手応えがあるのか、それとも自分の作業が進まないことに強い苛立ちを覚えるのかを見ます。後者が強いなら、今はその時期ではないというだけの話です。
技術で深める側を試したいなら、チームが後回しにしている厄介な課題を一つ引き取ってください。原因の分からない性能劣化や、誰も触りたがらない古いモジュールのような、答えが用意されていないものです。調べ続ける時間が苦にならないか、途中で飽きるかで、かなりはっきり分かれます。
判断材料としては、身近な人に聞くのも有効です。テックリードやマネージャーに「この仕事の何が一番面白いですか」と聞いてみてください。返ってくる答えが自分にも面白そうに聞こえるかどうかは、想像だけで悩むより確かな手がかりになります。
どちらを選んでも、ここまで積んできた技術の土台は無駄になりません。今は決めきらず、両方を少しずつ試しながら進む、という選び方も十分に現実的です。
復習ミニクイズ
エンジニアリングマネージャー(EM)とスペシャリスト(IC)の役割の違いに関する説明として、レッスンの内容に基づき最も適切なものはどれですか?