AIへの指示の出し方:プロンプト入門
ペルソナ設定の技術:AIを専門家にするプロンプトの書き方
「プロのライターになってください」で、何も変わらなかった
役割を与えると答えが良くなると聞いて、冒頭に「あなたはプロのライターです」と足してみた。ところが出てきた文章は、さっきとほとんど同じだった。この経験をした人はかなり多いはずです。
一方で、同じ役割の指定でも劇的に変わる場面があります。「効果的なダイエット方法を教えて」に対して、何も付けなければ「バランスの良い食事と適度な運動を」という答えが返ります。ここに「あなたは栄養士の資格を持つトレーナーです」と足すと、摂取と消費の収支をどう見るか、という話に変わります。
役割の指定には、効くときと効かないときがあります。境目は、その役割を名乗る人だけが使う言葉があるかどうかです。
役割が効くのは、語彙が入れ替わるから
AI は入力された文章の続きとして、確率の高い語を選びます。冒頭に「あなたはスポーツトレーナーで、栄養士の資格を持っています」と書くと、その先に続きやすい語が変わります。エネルギー収支や除脂肪体重といった語が上位に上がり、「バランスの良い食事と適度な運動」のような一般語が相対的に下がります。
つまり役割の指定は、AI の性格を変えているのではありません。使われる語彙の分布を動かしています。こう捉えると、効く役割と効かない役割の区別が付きます。
「プロのライター」が効きにくいのは、ライターだけが使う専門語というものが、ほとんど無いからです。効く役割は、次のように語彙が絞れるものです。
プレーンテキスト
あなたは、B2B SaaS の導入事例記事を 5 年書いてきた編集者です。
発注元の担当者に聞き取った内容を、決裁者が読む前提の記事に整えます。
数字の裏取りが取れていない箇所は、断定せず「確認中」と明示してください。肩書きだけでなく、扱う領域と、読み手と、判断の基準まで書いてあります。ここまで書くと語彙が絞られ、出力が変わります。役割が効かないと感じたときは、役割の言葉を強めるのではなく、領域と読み手を足してください。「一流の」「経験豊富な」といった修飾語をいくら重ねても、語彙は動きません。動かすのは、その領域だけで使われる名詞のほうです。
役割では足せないもの
一方で、役割の指定では埋まらないものがあります。あなたの手元にしかない情報です。
「あなたはうちの経理担当です」と書いても、AI が自社の勘定科目の運用ルールを知ることはありません。役割で動くのは語彙の選び方だけで、知識そのものは増えないからです。ここを取り違えると、それらしい語彙で書かれた、中身の間違った文章が出てきます。しかも語彙が専門的なぶん、読んで気づきにくくなります。役割を書いても事実が合わないときは、役割を盛るのではなく資料を貼ってください。
もう 1 つ、実在の人物名を役割に使うのは避けたほうが安全です。その人が実際には言っていない主張を、その人の口調で書いた文章が手元に残ることになります。社外に出す文章では特に扱いに困ります。
復習ミニクイズ
AIに「ペルソナ設定」を行う最大のメリットとして、レッスンの内容に基づいた最も適切な説明はどれでしょうか?