データ分析入門
上から下へ、全 53 枚そのまま並べています。
発表モードで開くデータ分析入門
このシリーズのゴール
10回を通じて、データを「見る人」から「使う人」へ。実務で意思決定を支えるスキルを身につけます。「なんとなくグラフを作る」から「問いを立て、証拠で答える」への転換がゴールです。
- データを読み解き、ストーリーとして語れる(数字に意味を与える)
- 分析の型(5ステップ)を自分の仕事に適用できる
- ExcelからPythonまで、場面に応じて道具を選べる(適材適所)
- 数字に騙されず、正しい問いを立てられる(批判的思考)
- 上司・顧客・チームに「だから、こうすべき」と提案できる
全10回のロードマップ
今日はここ(第1回)。概論から始まり、徐々に実践・応用へと進みます。各回2時間 × 10回 = 計20時間で、業務で使えるレベルを目指します。
今日の到達目標
2時間後、この3つを自分の言葉で語れるようになっていればOKです。帰宅後の飲み会で友人に説明できるレベルを目指します。
今日の流れ
Part 1
データに囲まれた日常
私たちは毎日、知らないうちに大量のデータを生み出し、同時にデータに支えられて生きています。意識していないだけで、すでにデータの恩恵を受けています。
世界のデータ量は爆発している
人類が生み出すデータ量(ゼタバイト, ZB)。2010年→2025年の15年で約70倍に。1ZB = 1兆GB。動画・IoT・SNSが主な源泉です。
データ活用企業は成長が速い
データドリブンな意思決定を定着させた企業ほど、売上・生産性の伸びが大きいという調査結果。特にトップ層は非活用層の5倍以上の成長率を示します。
データ分析でできる3つのこと
分析の目的は大きく3つ。自分の仕事がどこに該当するかを意識すると、使う手法・必要なデータ・かかる時間が見えてきます。
業界別 データ活用の実例
「うちの業界では関係ない」は幻想。どの業界でも、既に競合はデータで戦っています。自分の業界の事例を頭に入れておきましょう。
勘と経験 vs データドリブン
In God we trust. All others must bring data.
ミニ演習①
3分間、手元のメモに書き出してみてください。終わったら隣の人と2分間シェアします。正解はありません、「気づき」が目的です。
- あなたの身の回りにある「データ」を3つ挙げてください
- そのデータは誰が、何のために集めていますか?
- そのデータが無かったら、どんな不便が起きますか?
- ボーナス: そのデータは誰の利益になっていますか?(自分?企業?)
Part 2
分析の5ステップ
どんなに高度な分析も、この5ステップの組み合わせ。迷ったらこの図に戻る。特に①②で8割が決まり、④⑤で価値が生まれます。
①目的設定 — 問いを立てる
分析の成否の8割はここで決まります。「売上を上げたい」では弱い。もっと具体的な問いに落とし込みます。良い問いは答えを半分含んでいる、とも言われます。
- 悪い例: 売上を分析したい(漠然としすぎ)
- 良い例: 新規顧客のリピート率が落ちた原因を、商品カテゴリ別に特定したい
- 問いは SMART(具体的・測定可能・達成可能・関連性・期限)で
- 問いが無いとデータに溺れて何も出てこない
- コツ: 「決めたいこと」から逆算して問いを作る
②データ収集 — どこから集めるか
データの出どころは大きく3つ。社内に眠っているデータをまず棚卸しするのが第一歩。買う前に、社内にないか徹底的に探すのが鉄則です。
- 一次データ: 自社で集める(POS, アクセスログ, アンケート)
- 二次データ: 公開データ(e-Stat, 世界銀行, 業界レポート)
- 購入データ: 調査会社から買う(消費者パネル等、数十万〜)
- Webスクレイピング: 公開情報を自動収集(規約に注意)
- 落とし穴: 目的に合わないデータを集めても意味がない
③データ加工 — 汚いデータを綺麗に
④分析手法の4タイプ
分析は難易度と価値の順に、この4段階に整理できます。下ほど高度で、意思決定への影響も大きい。ただし現場の8割は①②で十分な価値が出ます。
実例 — カフェ売上分析のストーリー
5ステップが実際にどう流れるか。架空のカフェを題材にシミュレーション。現場ではこのサイクルを2-4週間で1周させるのが目安です。
分析プロジェクトで出てくる用語
会議でいきなり飛び交う言葉。全部完璧に覚えなくてOK、雰囲気が掴めれば十分です。
ミニ演習②
次の課題は、4タイプ(記述/診断/予測/処方)のどれに該当するでしょうか? 隣の人と相談して決めてください。答え合わせは後ほど。
- A: 去年の年間売上を地域別にまとめたい → ?
- B: 退会率が上がった理由を知りたい → ?
- C: 来月の在庫を何個用意すべきか決めたい → ?
- D: 顧客ごとに最適な広告を自動で出したい → ?
- E: 競合の新商品発売後、自社シェアがどう動いたか見たい → ?
頭のリセットも、データ分析の一部。
Part 3
データとは / 情報とは
よく混同される2つの言葉。分析では「データ」を「情報」に、さらに「知識」「知恵」へと変換するプロセスが仕事になります。この階層を DIKW ピラミッドと呼びます。
定量データ vs 定性データ
データは大きく2種類。両方を組み合わせることで、数字の背景にある理由が見えてきます。定量だけでも、定性だけでも片手落ち。
データの3つの形
データは「どれだけ整っているか」で3種類に分けられます。非構造化データは全体の約80%とも言われ、これを扱える企業が強い時代に。
平均 vs 中央値 — 初学者の罠
どちらも「真ん中」を表す指標ですが、意味が違います。使い分けを間違えると意思決定を誤る典型例。統計の第一関門です。
外れ値が平均を歪める例
ある村の年収データ。1人の大金持ちが混ざると、平均は実態から大きくズレます。メディアの「平均年収◯万円」報道も、この罠にハマっていることがあります。
相関 ≠ 因果
相関があっても、それが原因とは限りません。第三の変数(交絡因子)や偶然の可能性もあります。現場で最も頻発する誤りの一つです。
- 例1: アイス売上とプール事故は正の相関(真因は気温)
- 例2: 読書量と年収に相関(真因は教育歴や家庭環境)
- 例3: チョコ消費量とノーベル賞受賞率(偶然の相関)
- 両方の原因になる「第三の変数」を交絡因子と呼ぶ
- 因果を証明するにはA/Bテストや自然実験が必要
- 実務で「相関だけで施策を打つ」は赤信号
統計でよく騙される3パターン
分析結果を聞く側としても、この3つは知っておくと騙されにくくなります。広告・ニュース・社内報告にも頻出します。
良いデータ / 悪いデータ
同じ質問でも、データの質が低いと分析結果はゴミになります。"Garbage in, garbage out" は鉄則。データ収集の段階で9割決まります。
Garbage in, garbage out.
ミニ演習③
次の状況で、平均と中央値のどちらを使うべきか、理由とセットで答えてください。即答できれば、今日の内容は身についています。
- A: クラス30人のテスト結果を報告する → ?
- B: 日本全体の世帯年収を一言で表す → ?
- C: サイトの平均滞在時間(大半は10秒、一部は10分)→ ?
- D: 工場の製品重量(誤差±1%の正規分布)→ ?
- E: ホテル1泊の値段(1万〜100万円まで幅広い)→ ?
Part 4
主要ツール比較
ツールに優劣はありません。扱うデータ量と目的で選びます。まずはExcelから、物足りなくなったら次へ。全部学ぶ必要はありません。
分析手法の分類
学ぶ順番としては、まず可視化と記述統計から。機械学習はその先の世界。初学者は左から順に潰していくのが王道です。
Excelでどこまでできるか
「Excelは卒業すべき」という言説がありますが、実務の多くはExcelで十分。世界の分析業務の7割はまだExcelという調査も。無理に高度なツールに飛ばなくてOK。
- ピボットテーブル: 集計の9割はこれで済む
- VLOOKUP / XLOOKUP: マスタとの突合
- グラフ機能: 報告用の可視化
- Power Query: 大量データの前処理(実は強力)
- 限界: 100万行超、複雑な条件分岐、再現性、チーム共有
SQLの雰囲気を掴む
Pythonの雰囲気を掴む
典型的な分析環境
現代の分析環境はこの3層構成が基本。データが流れる道筋を頭に入れておきましょう。今日はまだ触らなくてOK、Ep.07以降で実際に使います。
キャリアパスの広がり
データ関連の職種は多様化しています。自分の興味と強みから、どの方向に行くか考えてみましょう。兼務も多いですが、役割のグラデーションを把握しておくと便利。
次回以降のラインナップ
今日の知識を前提に、次回からは手を動かすパートが増えていきます。各回で小さな成果物(グラフ・レポート・コード)を作っていきます。
まとめとクイズ
総合クイズ①
クイズ①の答え
総合クイズ②
クイズ②の答え
今日の3つの学び
この3つを同僚に説明できれば、今日の2時間は成功です。明日から、数字の見え方が少し変わるはず。チームのSlackでシェアしてみてください。
今日から始める3つのアクション
知識は使わないと忘れます。明日から2週間、この3つを意識してみてください。小さな実践が次回の学びを加速します。
- ①自分の業務データを1つ選び、5ステップに当てはめて整理してみる
- ②社内の報告書・ニュース記事を見るたび「サンプルは? 定義は?」と問う
- ③ExcelのピボットテーブルをまだならYouTubeで15分だけ触ってみる
- ④次回までに「分析してみたい問い」を3つメモしてくる(宿題)
- ⑤本1冊読むなら: 『データ分析の力』『統計学が最強の学問である』
次回予告 — Ep.02 データの種類
次回はデータの分類をもう一段深く。実務ですぐ使える「尺度水準」という考え方を学びます。今日より少しテクニカルになりますが、ついてこれる内容です。
- 名義尺度 / 順序尺度 / 間隔尺度 / 比例尺度
- 尺度によって使える統計量が変わる
- 簡単なExcelハンズオンあり(PC持参推奨)
- 宿題: 自分の仕事のデータを尺度で分類してくる
- 所要時間: 2時間(休憩10分込み)
データは語らない。問いを持つ者だけが、データを味方にできる。