この記事の話を、1分ちょっとの動画にまとめています。
結論から言います。
意味はあります。しかも、AIがコードを書けば書くほど、その意味は増えていくと思っています。
理由は単純です。AIが書いたコードを検証できて、中身を説明できて、動かなかったときに責任を取れる人が、書かれるコードの量に対して足りていない。書ける人が増えるほど、検証できる人の希少価値が上がる。AIは増幅装置で、どちら側に増幅されるかは基礎で決まります。 この記事で言いたいことは、これで全部です。
なので、3つの円で考えます。AIができること。AIと人が重なるところ。人がやること。目指す意味があるのは最後の円で、そこに立てるかどうかを決めるのが基礎です。順番に書きます。
AIができること
2026年1〜3月、App Store(iOS)の新規アプリは前年同期比で80%増えたそうです。Appfiguresの集計をTechCrunchが2026年4月に伝えていました。TechCrunchは、AIのコーディングツールが理由ではないかという見立てを書いています。
私の実感も同じです。AIがコードを書くようになって、アプリを「作れる人」は明らかに増えました。
AIが得意なのは、すでに世の中に山ほどある書き方を、要望に合わせて組み立て直すことです。ログイン画面、一覧と詳細、フォームの保存。こういう「どこにでもある部品」は、AIが最も速く、最もそれらしく書きます。世の中のアプリの大半はこの部品の組み合わせなので、作れるものの範囲は、思っているより広いです。
作れる人が増えたこと自体は、使える道具が増えたという意味で、いいことだと思っています。
で、うちに来る相談も増えました。
「AIで作ったんですが、直せますか」
この一言に、AIができることと、できないことの両方が入っています。作れた。でも直せない。作れたところまでがAIの円で、直せないところから先が、この記事の話です。作れることと、仕事として納められることの間にどれだけ距離があるかは、AI副業は無理。受託でそんな人見たことない にも書いています。
重なるところ
うちは受託開発の会社なので、AIが書いたコードのその後を見る側にいます。
動くんですよ、最初は。それっぽく。
画面はきれいで、ボタンを押せば反応して、データも保存される。作った本人は、自分でも驚くくらいのものができたと感じていると思います。実際、そこまでは本当にできています。嘘ではありません。
問題はその先です。仕様を少し変えたい。データが増えた。エラーが出た。そうなったとき、作った本人が中身を説明できない。
答えが毎回変わるのは、AIの欠陥というより性質です。同じ質問をしても、少しずつ違う答えが返る。読める人にとっては選択肢が増えるだけですが、読めない人にとっては、どれを信じればいいかが分からなくなる。同じ性質が、片方には便利さとして、もう片方には迷いとして返ってきます。
この状態を、私は「重なるところ」だと思っています。
これは、書ける人にとって悪い話に聞こえるかもしれませんが、私はそう思っていません。書くところで消耗しなくてよくなったぶん、その先に時間を使えるようになったので。
ただし、重なっているのは「書く」までです。書いたものを読んで、なぜそう動くのかを説明して、変えたらどこに影響するかを見通す。ここは重なっていません。 AIもそれらしいことは言いますが、言われた側がそれを確かめられないなら、確かめていないのと同じです。
「直せますか」と持ってこられたコードは、まさにこの「あと」の工程に入った瞬間のものです。書く工程はAIが済ませて、あとの工程を引き受ける人がいなかった。それだけの話です。
人がやること
ある記事で、企業が「バイブコーディングで作ったツールは、使用前に情シスのチェックを申請すること」というルールを作った話を読みました。
これ、笑ってしまったんですが、笑いごとじゃないんですよね。
つまりこうなります。書ける人が増えるほど、検証できる人の希少価値が上がる。
コードの総量が増えて、その品質を担保できる人の数は増えていないので。
人がやることを、もう少し具体的に言います。3つあります。
ひとつめは検証です。動いているように見えるものが、本当に要件どおりに動いているかを確かめる。エラーが出て止まるものは分かりやすい。厄介なのは、エラーが出ないまま違うことをしているコードです。数字がひとつずれている、ある条件のときだけ保存されない、見えてはいけない人に見えている。どれも画面は普通に開きます。これは、読める人にしか見つけられません。
ふたつめは説明です。「なぜこう書いたのか」「ここを変えると何が起きるのか」を、発注した人や、次に触る人に言葉で伝える。説明できないコードは、誰にも引き継げません。引き継げないコードは、作った人がいなくなった瞬間に、誰も触れない箱になります。
みっつめは責任です。「これで大丈夫です」と言うこと。言った以上、動かなかったら直す。壊れたら対応する。仕事としてコードを納めるとき、お金が発生しているのは、実はコードそのものではなく、この一言に対してです。
| 人がやること | AIがすること | 引き受ける人がいないと | |
|---|---|---|---|
| 検証 | 要件どおりに動いているかを確かめる | それらしい確認 | エラーが出ないまま違う動きをするコードが残る |
| 説明 | なぜこう書いたか、変えると何が起きるかを言葉で渡す | それらしい説明 | 引き継げない箱になる |
| 責任 | 「これで大丈夫です」と言い、動かなければ直す | 結果を引き受けない | 動かなかったとき、誰も直さない |
そして、この3つは書く力の上に乗っています。書いたことがない人は、読めません。壊したことがない人は、どこが壊れやすいかを知りません。検証できる人が急に増えない理由はここにあって、近道がないからです。
エンジニアを目指す意味があるとすれば、ここです。AIの円に入ることではなく、この円に立つこと。ここが答えです。
脅しで終わらせたくないので
ここまで書くと「AI怖い」の記事になってしまうので、逆側も正直に。
AIのおかげで、学習は確実に速くなりました。昔なら書籍を3冊読んでいた内容が、対話で確かめながら進められる。分からない単語をその場で聞ける。書いたコードがなぜ動かないのかを、夜中でも聞ける。うちの受講生も普通にAIを使って学んでいます。禁止する理由がありません。
これは学習だけの話ではなく、基礎がある人がAIを使うと、怪しい箇所が読めて、直す指示が出せて、そのまま納めるか手を入れるかを自分で決められるので、単純に速くなります。
要は、AIは増幅装置なんです。基礎がある人の生産性を増幅するし、基礎がない人の「動くけど説明できないもの」も増幅する。
同じ道具です。差が出るのは道具の側ではなく、使う人の側にあるものです。
どちら側で増幅されるかは、基礎で決まります。
だから「AIがあるから基礎はいらない」は、順番が逆だと思っています。AIがあるからこそ、基礎の有無が、以前より大きな差になって返ってくる。基礎がない人は、以前なら「書けない」のところで止まっていました。いまは「書けるが説明できない」まで進んでしまう。止まらないぶん、あとで戻る距離が長くなります。
ここで言う基礎は、文法の暗記のことではありません。コードを読んで、なぜそう動くのかを追えること。データがどこから来てどこへ行くかを、頭の中で描けること。何が壊れやすくて、壊れたときにどこを見ればいいかを知っていること。この3つがあると、AIの出力に「違う」と言えるようになります。言えるようになった瞬間から、AIは増幅装置として、いい側に働き始めます。
だから、意味はあります
エンジニアを目指す意味は、この最後の円にあります。AIが書けば書くほど、それを引き受けられる人の値段は上がります。 目指す意味は、減っていません。増えています。
これから学び始める人に言いたいのは、AIと競う準備はしなくていい、ということです。競う場所はそこではありません。AIが書いたものの隣に立って、読んで、大丈夫かどうかを言う。その場所は空いていて、これからもっと空きます。
AIはコードを書きます。責任は書きません。
責任を書ける人になるために、うちは18ヶ月使っています。その18ヶ月で何をどの順にやるかは、ゆめさく18ヶ月ロードマップ に書いています。
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