ゆめさくエンジニア研究所
代表記事2026.09.0710分で読めます

在宅を任せるかどうかは、コードの腕で決めていない

運営代表現役ソフトウェアエンジニア

受託開発会社の代表が、在宅で仕事を任せるかどうかを何で決めているかを書きます。技術は前提です。その先に見ているのは、依頼の確認、途中経過、完成の根拠、相談の境界が文章で見えるかどうか。報告テンプレートも載せます。

目次7項目
  1. 同じ「できました」でも、確かめられる中身が違う
  2. 任せる前に、認識がそろっているかを見る
  3. 途中で分かるようにする
  4. 完成の根拠を残す
  5. 一人で抱えない境界を決める
  6. 学習のうちにできる練習に落とす
  7. 自分の報告を1つ書き直す

在宅で仕事を任せるかどうかを決めるとき、うちはコードの腕で決めていません。

受託でシステムを作っている会社なので、社員にも外の人にも仕事を出します。出した仕事が在宅で回るかどうかは、毎回こちらが判断しています。その判断の材料に、コードの速さや綺麗さはほとんど入っていません。

先に範囲を切っておきます。技術が要らないという意味ではありません。 書けない人には、在宅かどうかの前に、そもそも仕事を出せません。技術があることを前提にして、その先で何を見ているか。この記事はそこだけを書きます。

もうひとつ。ここに書くのはうちの基準です。在宅の可否をどう決めるかは会社ごとに違うので、全企業の採用基準として読まないでください。

田中まほ
田中まほゆめさく広報
題が「技術は要らない」と読まれます。プログラミングを教えている会社がそれを言うのは、広報としては困ります。せめて「腕だけでは決めない」に変えませんか。
代表
代表
変えません。腕で決めていない、は事実なので。技術が前提であることは最初に書きました。本文は、決めている材料のほうに使います。

同じ「できました」でも、確かめられる中身が違う

在宅で仕事を出すと、こちらに届くのは文章だけです。手が止まっている空気は届きません。届いた文章からどこまで確かめられるか。まずここを見ています。

教材用に作った例を2つ並べます。実在の社員や応募者の報告ではありません。公開の許可を取った実物を持っていないので、持っていないものを実話のように書くことはしません。

できました。確認お願いします。

会員一覧を登録日で絞り込む機能を実装しました。差分はプルリクエストに上げています。手元では、開始日と終了日を逆に入れた場合と、片方だけ空の場合を試して、どちらも想定どおりでした。該当が0件のときの表示は仕様に無かったので、いまは「該当なし」と出しています。ここだけ判断をお願いします。明日の午前に見てもらえれば、午後には直せます。

1つ目は、こちらが差分を開いて、何をしたのか、何を試したのか、何が決まっていないのかを組み立て直すことになります。組み立て直せなければ、電話をかけます。在宅にした意味が、そこで消えます。

2つ目は、読んだ時点で判断できます。やったこと、確かめたこと、決めていないこと、こちらに求めていること、期限。この5つが読んだだけで分かる報告を書く人には、在宅で出せます。 コードの出来が同じでも、任せられるかどうかは、この差で決まります。

同じ「できました」でも、中身が違う教材用に作った2つの報告を、やったこと・確かめたこと・決めていないこと・相手に求めること・期限の5つで並べた。1つ目の「できました。確認お願いします。」では、求めることは「確認お願いします」だけで、ほかは書かれていないため、受け取った側が組み立て直し、できなければ電話をかける。2つ目は、絞り込む機能を実装、逆の日付と空欄を試した、0件のときの表示が決まっていない、ここだけ判断をお願い、明日の午前に見て、が書かれていて、読んだ時点で判断できる。コードの出来が同じでも、任せられるかどうかは、この差で決まる。同じ「できました」でも、中身が違う任せられるかどうかは、この差で決まる1つ目の報告2つ目の報告やったこと絞り込む機能を実装確かめたこと逆の日付・空欄を試した決めていないこと0件のときの表示相手に求めること確認お願いしますここだけ判断をお願い期限明日の午前に見て相手が組み立て直すできなければ、電話をかけます読んだ時点で判断できる※教材用に作った例。実在の社員や応募者の報告ではありません
教材用に作った2つの報告を、やったこと・確かめたこと・決めていないこと・相手に求めること・期限の5つで並べた。

任せる前に、認識がそろっているかを見る

任せてから見るのではなく、任せる前に見ているものがあります。依頼を受け取ったとき、手を動かす前に何を聞き返すかです。

オフィスなら、隣の席で「これ、どういう意味ですか」と聞けます。在宅だと、その一言を飛ばして進める人と、文章で聞いてから進める人に分かれます。見ているのは、次の4つを確かめに来るかどうかです。

  • 目的。誰が、何のために使うのか
  • 完成条件。何ができたら終わりなのか
  • 期限。いつまでに、どの状態まで要るのか
  • 確認相手。できたと言う相手は誰で、判定するのは誰か

これも教材用の例です。「会員一覧にCSV出力を付けてほしい」という依頼に、こう返してくる人がいます。

経理の月次集計で使う、という理解で合っていますか。それなら、絞り込んだ結果だけを出すのか、全件出すのかを決めたいです。Excelで開く前提なら、文字コードをBOM付きのUTF-8にしないと日本語が化けるので、そこも確認させてください。月末までに、経理の方が実際に開いて確かめる時間は取れますか。

聞き返しの中身に、技術が入っています。BOMの話は、CSVをExcelで開くと何が起きるかを知らないと出てきません。確認は、技術を持っている人が、その技術を使って相手の認識に合わせに行く作業です。 技術が無い人にはできません。ただ、技術がある人が全員やるわけでもないので、任せる前にここを見ます。

途中で分かるようにする

出した仕事がいまどうなっているかを、こちらが聞かなくても分かる状態にしてくれるか。これが3つ目です。

先に、混ぜられやすいものを分けておきます。常時オンラインでいることでも、即レスすることでも、こちらが監視することでもありません。 見に行くのではなく、置いておいてもらう話です。うちの場合、1日1回、決まった場所に置いてあれば足ります。返事を待たずに次へ進んでもらって構いません。

置いておいてほしい中身は4つです。

1日1回、置いてあれば足ります在宅に要るのは、常時オンライン・即レス・監視ではない。見に行くのではなく、置いておいてもらう。1日1回、決まった場所に、予定と実績の差、詰まっている点、助けが要るかどうか、変更点を置けば足りる。いちばん見ているのは、詰まっている点(何を試して、何が分からないか)。いつ書くか、いつ休むかは本人の側にある。うちの場合で、会社ごとに違う。1日1回、置いてあれば足ります見に行くのではなく、置いておいてもらうではない常時オンライン即レス監視1日1回、決まった場所に予定と実績の差詰まっている点何を試して、何が分からないかいちばん見ている助けが要るかどうか変更点いつ書くか、いつ休むかは本人の側※うちの場合。会社ごとに違います
在宅に要るのは、常時オンライン・即レス・監視ではない。
  • 予定と実績の差。今日どこまで行く予定で、どこまで行ったか
  • 詰まっている点。何を試して、何が分からないのか
  • 助けが要るかどうか。要るなら、誰に、何を
  • 変更点。依頼のときと違う判断をした箇所

いちばん見ているのは2つ目です。「順調です」だけの報告が3日続いて、4日目に「実は動いていません」と来る。腕の問題ではなく、詰まったことを書く場所と習慣が無かっただけです。ただ、こちらから見ると結果は同じで、次から在宅に出しにくくなります。

田中まほ
田中まほゆめさく広報
これは監視に読まれます。「途中で分かるようにしろ」は、「常に見ているぞ」と同じでは。
代表
代表
違います。見ているのは報告が置かれる場所で、本人ではありません。いつ書くか、いつ休むかは本人の側にあります。
田中まほ
田中まほゆめさく広報
それでも「報告を増やせ」と受け取る人はいます。増やしたら評価が上がる、と。
代表
代表
増やしても上がりません。1日1回でいい。ただし、その1回に「詰まっている」が正直に入っていること。回数ではなく、中身です。

ゆめさくエンジニアの講師の山本が、リモートで開発している立場から「相手の顔が見えない分、認識齟齬がないように、会話以上に細かく文字で伝えることを心がけている」と話しています。作業報告は「だいたい順調です」ではなく数字で言う、というのも同じ話です。

完成の根拠を残す

「できました」と「確かめました」は別のものです。在宅では、確かめた証拠が文章と一緒に届くかどうかを見ています。

残してほしいのは4つです。

  • 差分。何を変えたかが、そのまま見える形
  • テスト。自動でも手動でも、何を試したかが書いてあればいい
  • 画面。動いているところ。スクリーンショットで足ります
  • 未確認項目。試していないこと、判断を保留したこと

4つ目を書ける人を、いちばん信用しています。「全部確かめました」と言う人より、「ここは試していません」と言う人のほうが、安心して次を出せます。未確認が書いてあれば、そこだけ確かめればいい。無ければ、全部こちらで確かめ直すことになります。

ゆめこ
ゆめこ
書く速さは、関係ないの。

これはコードを書く速さの話ではありません。速く書いて根拠を残さない人と、時間はかかるが根拠が揃っている人なら、在宅に出すのは後者です。

通用するかは教える側には分からず、採る側と払う側にしか分からない、と僕は考えています。根拠を残してほしい、はその「払う側」の言葉です。

一人で抱えない境界を決める

在宅でいちばん起きやすいのは、詰まったまま一人で抱えることです。オフィスなら顔色で分かるものが、在宅だと報告が止まるまで分かりません。

だから、相談する基準を先に決めてもらいます。うちの場合、「何分悩んだら」ではありません。時間で切ると、30分で聞いていいことを2時間抱える人と、5分で分かることを毎回聞く人の両方が出ます。切るのは次の3つです。

  • 影響。自分の作業だけで済んでいるか、他の人の作業を止めているか
  • 期限。今日中に決めないと、期限に間に合わなくなるか
  • リスク。やり直せる操作か、戻せない操作か

他の人を止めている、期限に響く、戻せない。どれか1つに当たったら、悩む前に書く。当たらなければ、自分で試していい。

もうひとつ、はっきり書いておきます。勤務時間の外で対応することを、うちは評価に入れません。 夜中に直しました、休日に返しました、という報告は、頑張りの証拠ではなく、任せ方か境界の引き方のどちらかが間違っていた証拠です。在宅は生活の中に仕事があるので、境界を引かないと仕事が生活を食います。それを美徳にしたら、長く続きません。

田中まほ
田中まほゆめさく広報
「夜に直した人を評価しない」は、頑張る人を否定しているように読まれます。
代表
代表
評価しないのは「夜に直したこと」で、直したこと自体は評価します。夜に直さないと回らない状態を作ったのは、出したこちら側です。それを本人の美談にすると、次も夜になります。

学習でも同じです。生活の外に学習を押し込むと、続きません。時間をどこに置くかは、別の記事に書きました。

学習のうちにできる練習に落とす

ここまで書いたことは、会社に入ってから急に身につくものではありません。学習の段階で練習できるので、そちらのほうが早いです。

やることは1つです。課題を出すとき、コードだけを出さない。次の5つを添えます。

  • やったこと
  • 確認したこと
  • 残り
  • 困りごと
  • 次の一手

うちの受講生なら、宿題やチャットの質問に添えられます。独学の人なら、自分の学習メモに書けばいい。

書いてみると、コードは動いたのに「確認したこと」が埋まらないことが起きます。動いただけで確かめていない状態が、そこで見えます。課題の正解率より、この5つが埋まるかどうかのほうが、在宅に出せるかどうかに近い。 受講生の宿題を見るときも、そこを見るようにしています。

田中まほ
田中まほゆめさく広報
最後に「この練習はうちの授業でやれます」と一言入れませんか。せっかくの導線です。
代表
代表
入れません。この記事は、うちに入らない人が読んでも使えないと意味がないので。テンプレートを置いて終わります。

自分の報告を1つ書き直す

最後に、いま手元にある報告を1つ、これで書き直してみてください。仕事の報告でも、課題の提出でも、学習メモでも構いません。

報告を1つ、6つの欄で書き直す手元の報告を1つ、6つの欄で書き直す。仕事の報告でも、課題の提出でも、学習メモでもよい。終わったこと、終わっていないこと、確かめた証拠(何を変えたか・試した結果・画面のいずれか)、困っていること(何を試して、何が分からないか)、次にやること(次の1手)、決めてほしいことと期限。空欄が残るところが、いま弱いところで、直すのはそこだけ。報告を1つ、6つの欄で書き直す仕事の報告でも、課題の提出でも、学習メモでも1終わったこと2終わっていないこと3確かめた証拠何を変えたか・試した結果・画面のいずれか空欄=いま弱いところ4困っていること何を試して、何が分からないか5次にやること次の1手6決めてほしいことと期限直すのは、空欄のところだけ
手元の報告を1つ、6つの欄で書き直す。
  • 完了事項。何が終わったか
  • 未完了事項。何が終わっていないか
  • 確認した証拠へのリンク。差分、テスト結果、画面のいずれか
  • 困っている点。何を試して、何が分からないか
  • 次に行うこと。次の1手
  • 相手に決めてほしいことと、その期限

埋めてみて、空欄が残るところが、いま弱いところです。直すのはそこだけです。在宅で任せるかどうかを決めるとき、うちが見ているのは、この6つの欄が埋まる人かどうかです。


更新履歴 2026-09-22 公開

※筆者は「ゆめさくエンジニア」の運営代表です。本文の依頼と報告の例は教材用に作ったもので、実在の社員・応募者・受講生の発言ではありません。ここに書いた基準は運営会社のもので、会社ごとに違います。

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