ゆめさくセキュリティ

2011年8月29日に発覚、海外、認証局(電子証明書発行事業者)

DigiNotar 認証局侵害と偽の証明書

外部の古いウェブサーバーから侵入され、偽のGoogle証明書でイラン利用者が盗み見られた

何があったか

オランダの認証局DigiNotarは、2011年6月17日、外部に公開していたウェブサーバーMain-webとDocproof2から侵入された。両サーバーは既知の脆弱性がある古いバージョンのDotNetNukeを動かしており、侵入者はそこを足場(ステッピングストーン)にして社内のネットワークを奥へ進んだ。社内のMSSQLサーバーを経由して業務ネットワークに入り、7月1日には証明書を発行する最も重要な区画(Secure-net)にも到達し、7月2日から証明書発行管理システムの画面を操作する痕跡が残った。

7月10日、侵入者はRelation-CAサーバーで初めて偽の証明書を作ることに成功し、その後もPublic-CAサーバーなどで作り続け、確認できただけで531件の不正な証明書が発行された。8月下旬、イランのGoogleサービス利用者が、Google Chromeの警告で偽の*.google.com証明書に気づいてGoogleのフォーラムに投稿し、8月29日にGoogleが複数の通報を受けて事態が表面化した。DigiNotarは証明書を失効させ、オランダ政府の依頼でFox-ITが調査に入った。

9月2日、政府向けの証明書を扱うサーバーも侵害されていたことが分かり、9月3日にオランダ政府はDigiNotarへの信頼を公に取り消し、主要なブラウザやソフトウェアもこれに続いた。OCSP応答のログを調べたところ、偽のGoogle証明書への問い合わせは65万件を超え、そのうち95%がイランから来ていたことが分かり、多くのイラン利用者が中間者攻撃でGmailなどを盗み見られていたとみられる。9月14日にDigiNotarは適格電子署名の認証局としての登録を失い、9月19日に破産を申請、20日に破産が確定した。

入口
外部に公開していたウェブサーバーが、既知の脆弱性を持つ古いバージョンのDotNetNukeを動かしたままになっており、そこから侵入された
決め手の失敗
脆弱性のある古いソフトウェアを外部公開サーバーに残していたこと、証明書を発行する最も重要な区画(Secure-net)まで内部ネットワークが十分に分離されていなかったこと、侵入から証明書の不正発行まで約1か月近く検知できなかったことが重なった
被害
確認できただけで531件の不正な証明書が発行され、うち偽の*.google.com証明書は65万件を超えるOCSP問い合わせを受け、95%がイランからだった。多数のイラン国内のインターネット利用者がGmailなどの通信を盗み見られた可能性がある。DigiNotarは信頼を失い、9月20日に破産した

攻撃の流れ

  1. 入口外部に公開していたウェブサーバーMain-webとDocproof2が、既知の脆弱性を持つ古いバージョンのDotNetNukeを動かしており、2011年6月17日に侵害された
  2. 広がり侵害したウェブサーバーを足場(ステッピングストーン)にして、社内のMSSQLサーバー経由で業務ネットワーク(Office-net)に入り、6月29日には社内からさらに外部の攻撃者用サーバーへ接続する通信も確認された
  3. 権限の奪取7月1日、証明書発行を管理する最重要区画(Secure-net)への侵入の痕跡が現れ、7月2日からは証明書管理ソフトの画面を操作する痕跡が残った。ポート443(HTTPS)にリモートデスクトップの通信を偽装させるトンネルで複数のCAサーバーに入った
  4. 不正発行7月10日に初めて偽の証明書がRelation-CAサーバーで作られ、以後Public-CAサーバーなどでも作られ続けた。確認できただけで531件の不正な証明書が発行され、ログの削除や改ざんも見つかった
  5. 影響偽の*.google.com証明書が8月上旬から大規模な中間者攻撃に悪用され、65万件を超えるOCSP問い合わせのうち95%がイランから発生し、多くの利用者がGmailなどの通信を盗み見られたとみられる

数字で見る

  • 531件 確認された不正な証明書[1]
  • 約65万4,313件 偽のGoogle証明書へのOCSP問い合わせ[1] 有効と応答した件数。約29万8,140の異なるIPアドレスから
  • 約95% うちイランからの割合[1]
  • 約73日 侵入から公表までの期間[1] 6月17日の侵入から8月29日の表面化までを資料の日付から数えた

気づいたきっかけ

イランのISP利用者がGoogle Chromeの証明書警告に気づきGoogleのサポートフォーラムに投稿したことがきっかけで、2011年8月29日にGoogleが複数の通報を受け、偽の*.google.com証明書の存在が公になった

対応と復旧

DigiNotarはFox-ITに調査を依頼し、Fox-ITの助言でOCSP応答を既知の正規証明書だけを有効とするホワイトリスト方式に切り替えた。9月3日にオランダ政府がDigiNotarへの信頼を取り消し、主要ブラウザも追随した。9月14日に適格電子署名の認証局登録が終了し、9月19日に破産を申請、20日に破産が確定、以後すべての証明書が段階的に失効された

組織が認めた原因と、決めた対策

認めた原因

  • 外部に公開していたウェブサーバーが既知の脆弱性を持つ古いバージョンのDotNetNukeを動かしており、そこが最初の侵入口になった
  • 証明書を発行する最重要区画を含む社内ネットワークの分離が不十分で、侵入者が外部の足場から奥の区画まで到達できた
  • ログの削除や改ざんがあり、不正に発行された証明書の全容を完全には特定できなかった

公表した再発防止策

  • 重要なシステムはできる限りインターネットなど信頼できないネットワークから物理的に分離する
  • すべてのソフトウェアに最新のパッチを可能な限り早く適用する
  • 既定の設定に頼らず全システムを堅牢化し、重要なシステムは必要な用途だけに限定する
  • 外部の侵入テストを定期的に受け、毎回同じチームに頼らない
  • 異常を検知したら担当者に通知が飛ぶ仕組みでシステムとネットワークを監視する
  • 重要なログを他の機能から分離し、インシデント対応に必要な記録をあらかじめ整えておく

自分のサービスで確かめること

  • 外部に公開しているサーバーのソフトウェアに既知の脆弱性が残っていないか、パッチの適用状況を確かめる
  • 最も重要な区画(証明書発行や鍵管理など)が、公開サーバーのある区画から十分に分離されているか確かめる
  • ネットワーク内の異常な通信や侵入の試みを検知し、担当者に通知が届く仕組みがあるか確かめる
  • 重要なログが改ざんや削除をされにくい場所に、別途保全されているか確かめる
  • インシデント対応の役割分担と報告の流れを、事前に関係者へ周知しているか確かめる

関わる攻撃とレッスン

時系列

  1. 2011年
  2. 6月17日 侵入 外部公開のウェブサーバーMain-webとDocproof2が、古いDotNetNukeの脆弱性を突かれて侵害された[1]
  3. 7月10日 侵入 Relation-CAサーバーで初めて偽の証明書が作られた[1]
  4. 8月28日 発覚 イランのISP利用者がGoogle Chromeの証明書警告についてGoogleのサポートフォーラムに投稿した[1]
  5. 8月29日 発覚 Googleが複数の通報を受け、偽の*.google.com証明書が公になった。DigiNotarが当該証明書を失効させた[1]
  6. 8月30日 対応 DigiNotarがFox-ITに侵入の調査を依頼した[1]
  7. 9月3日 処分 オランダ政府がDigiNotarと同社発行の証明書への信頼を公に取り消した[1]
  8. 9月5日 公表 Fox-ITの中間報告書がオランダ政府により公表された[2]
  9. 9月14日 処分 OPTA(オランダの電気通信法に基づく規制当局)が適格電子署名の認証局としての登録を終了させた[1]
  10. 9月20日 対応 ハールレム裁判所がDigiNotar B.V.の破産を宣告した[1]
  11. 2012年
  12. 8月13日 公表 Fox-ITによる最終報告書「Black Tulip」がオランダ内務王国関係省向けにまとめられた[1]

攻撃した側について

Fox-ITの報告書は、偽のGoogle証明書への問い合わせの95%がイランから来ていたことや、侵入に使われた一部のIPアドレスがイラン国内のDSL回線に割り当てられていたことを確認しているが、侵入者個人や特定の国家機関をオランダ政府が公式に名指しした記述は本報告書には無い。より詳しい身元や所在地に関する情報は捜査機関にのみ提供され、本報告書からは除かれている

出典

2026年10月24日に開いて確かめました。本文の [1] などの数は、この一覧の番号です。

  1. Black Tulip - Report of the investigation into the DigiNotar Certificate Authority breach Fox-IT (オランダ内務王国関係省の依頼による調査、オランダ政府公式刊行物データベースで公開)、2012年8月13日、調査委員会の資料
  2. Kamerstuk 26643, nr. 188 (DigiNotar侵害に関する国会への報告書類) オランダ政府(公式刊行物データベース)、2011年9月5日、議会の資料